佐藤和代の目は半眼……とでもいうのか、なかば閉じられた目は夢の世界をさまよっている。意識には夢の光景がつぎつぎと浮びあがっては消えていっているのだ。もちろん、彼女の目は完全に閉じてはいない、なかばつぶった目は、なかば開いた目でもある。だから、彼女には舞台が、客席が、つまり現実の世界が見えている。しかし、同時に夢の世界も見えているのだ。
舞台の真ん中に立った彼女は、風に吹かれてゆるやかに揺れる。こんな劇のはじまりがほかにあるだろうか?
身体を意識する劇とは、私にとって、宇宙を意識する劇のことだ。
この身体をもって、宇宙の一点に存在することを。
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